「それに応える責任がある」校長 古賀誠子
「それに応える責任がある」
校長 古賀 誠子
今日は、マタイによる福音書25章14節をご一緒に読みましょう。「天の国はまた次のようにたとえられる。ある人(ここではイエス様のこと)が旅行に出かけるとき、僕(しもべ)たちを呼んで、自分の財産を預けた。それぞれの力に応じて、一人には5タラントン、一人には2タラントン、もう一人には1タラントンを預けて旅に出かけた。」
「テレビタレント」という言葉をよく耳にします、そのためタレントという言葉は私たちに大変馴染み深い言葉です。そして、英語の talent 、「才能」という言葉が、この聖書の箇所の「タラントン」から出たものであるということは知らない人は多いかもしれません。当時の1タラントンは、労働者20年分の賃金に相当したといわれています。かなりの金額ですね。さて、ここで皆さんに考えてほしいことがあります。あなたが、その僕の1人だったとします。それぞれに、5タラントン、2タラントン、1タラントン、主人が預けます。あなたがそのうち1タラントンを預かったものとしたら、あなたはそのお金をどうしますか?少し考えてみてください。
預けられたお金が自分だけ少ない、主人から信用してもらっていないとか、それは不公平だとか、いろんなことを考えることでしょう。でも、その1タラントンのお金はたしかにあなたに預けられました、もう一度聞きます、あなたはそれをどうしますか。
さて、それぞれ5タラントンと2タラントンを預かった2人は、商売をして、それぞれ預かったものを倍にふやしました。しかし、1タラントンを預かった最後の者は、それをなくさないように、穴を掘ってそのお金を大切に保管しておいたのです。
かなりの日がたってから、主人が帰ってきて、お金の清算を始めます。最初の2人は、主人に大変喜ばれ、「忠実な僕よ、よくやった」と言って、褒められます、そしてさらに多くのものを与えられ、任されるようになりました。しかし、ただ隠しておいただけの僕に向かっては、主人は「怠け者」と叱ります。そして持っていた1タラントンも取り上げられ、闇の中にその人を追い出してしまったのです。与えられたタラントンを生産的に用いなかったので、その僕は持っていた1タラントンも取り上げられてしまったという結末です。このお話をあなたはどう考えますか。
このお話のポイントは2つです。1つ目、タラント(才能)とは、神様からあなたに預けられたものであり、あなたの個人的なものではありません。あなたの持っているよき力、すなわち才能は、それぞれの力に応じて、神様の責任の下で、すべての人に与えられている神様からの預かった大切な財産です。2つ目、みなさんに預けられたタラント(才能)は増やして、生産的に活用する自由と責任がみなさんの上にあります。どう使うかは確かに皆さんの自由意志が尊重されます。有効に増やす道を選択することができますか。たとえ人と比較して、自分のタラントの数が少ないように見えたとしても、タラントは、あなた次第で大きく、さらに大きく増えていきます。自分のタラントを守るために、地中に埋めて隠しておく生き方を選んではならないと聖書はいいます。どう増やすか、あなたは今日も神様から問いかけられているのです。
先日のシスター入江のお話の中で、教皇フランシスコ様の言葉が読まれました、もう一度繰り返します。
「川は自分の水を飲みません。
木々は自分の実を食べません。
花はその香りを自分自身に向けて流しません。
他者のために生きることが自然界の法則です。
私たちはみなお互い助け合うために生まれてきました。
それがどんなに難しいことであっても
あなたが幸いならあなたの人生はすばらしい
しかしあなたのおかげで他の人が幸せになるなら
もっとすばらしい」
そして、「シスターのひとりごと」とおっしゃって、「人間は一人一人神から問われている、それに応える責任がある」とメッセージをしめくくられました。
コロナウイルス感染症拡大で世界で57万人の方がお亡くなりになりました。日本でもまた感染者が増加傾向にあります。そして、豪雨のため、土砂災害、洪水、道路の寸断など、深刻な状況になっていて、九州では70人の方がなくなり、10人の方が未だ行方不明のままです。コロナウイルス感染症拡大防止で、県境をまたぐことができないため、ボランティアの人数も不足していて、大変な困難の中に被災地は立たされています。人吉市に住む81歳の男性の言葉です。「きついのなんの、ぜんそく持ちだし、腰が痛い。近所も被災し手伝いが頼めない。ただでさえ若い人が少ない、ボランティアの人は来てくれんとですかね。」コロナウイルス感染症、豪雨災害と、次々と困難が私たちを襲う毎日です。きついですね、苦しいです、神様は何をしておられるのでしょうかと聞きたくなります。しかし、私たちは「今」、人のために何ができるのでしょうか。海星の生徒は、「それに応える責任がある。」
今日もよき一日となりますように。