第2学期 始業式 校長 古賀誠子
第2学期 始業式
校長 古賀 誠子
夏休みが終わりました。1週間の間、みなさんはどう過ごしましたか。この1週間の間に、コロナウイルス感染症の拡大が一層すすみ、福岡県でも連日100人を超える感染者が出続けています。お盆に、祖父母の家に帰ったという人もいたのではないのでしょうか。同時に、通りには人が少なく、シャッターが閉まっているお店ばかり、異常に暑い夏、何もかもがいつもと違う様子を見せていることに、これからどうなるのだろうと不安を感じた人もいることでしょう。今年は、コロナで帰省をするのを控えて、親戚が会うのも自粛しようというお家も多かったのではないかと思います。私は、年老いた父や母にお正月以来全然会えていません。コロナに、人の絆、家族の絆まで奪われてしまわないようにと、ラインや、スカイプをつかって、できるだけ頻繁に話すようにしています、でも会って話すのとはやはり何かが違いますね。特に熊本県八代市の豪雨災害、40度を超える暑さの中で、復興のための作業が進められています。どうかすべての人の命と、明日への希望が守られますようにと祈ります。そして、2学期、皆さんが一人も感染しないようにと祈り、皆さんと廊下ですれ違うたびに、「皆頑張れ、たのむよ」と心の中で声をかけています。
さて、これからの日本を背負う若い高校生の皆さん、新型コロナウイルスの感染拡大、地球温暖化などの気候変動による頻発する自然災害、失業者の急増、福岡県の有効求人倍率の低下、社会の状況は日々大きく変わろうとしています。そのような中、みなさんは、不確実な未来に立ち向かう覚悟をもって前に進まなければならない、つまり進路選択にあたらなければならない世代となったと考えます。これから選びとる専門や職業は、「あなたがいかに豊かな人生を送るのか」に直結します。まず、自己分析をよく行うこと、次に、10年後、20年後の自分の将来を見通してキャリアデザインを描くこと、そして、やりたい学問・仕事について徹底的にリサーチすること、後悔しない進路を勝ち取るコツです。コロナ禍で仕事を失った人、または仕事をすることをあきらめた人は、女性が圧倒的に多いとのことです。その中で、私はあなたたちに、「確固たる信念を持ち、綿密な計画的をもって、希望の進路をつかみ取る」強い女性であってほしいと願います。 また、同時に伝えておきたいことは、まずは、「やってみないと自分の適性はわからない」、「未来は描いたようにはならない」、「社会は変化し続ける」、という現実を柔軟に受け入れる力が今問われているということです。将来の計画は大切です、しかし、その時々の時代に合わせて、日々の歩みを修正していく勇気と覚悟も必要です。これまでも思い通りにいかないことを生活の中でたくさん経験してきたことでしょう。不確実な未来に立ち向かう覚悟、困難な状況に直面しても乗り越えようとする気概があるかどうかは、人生をより豊かにそして実り多きものにしていくものであると考えます。3年生、『なすべきことを知る鋭い洞察力』を持て、自分で決めたことです、最後まで責任をもってやり通すこと、2年生、『問題を解決していく技術』を身につけよ、社会には様々な分野があることを知り、選びとり、関心のある分野を深める責任がある。1年生、『目指す目的に至る忍耐を持ち、なすべきことを始める勇気』を持て。もう立派な高校生です、何事も人任せにせず、自分の力で「専門の分野に踏み込んでみる」、自分の世界を広げる最初のステップを2学期に踏むこと。以上を、皆さんに期待しています。
一方で、私たちが忘れてはならないのは、「変えてはいけないこと」を守り続けるということです。昨年12月、アフガンで銃撃され、お亡くなりになられた同じ福岡県出身の中村哲先生の記録番組を見ました。先生は、中学生の時に洗礼を受けたクリスチャンでいらっしゃいます。その番組中で、大変印象に残った中村哲先生の言葉、『豊かな人生とは、人との比較ではない、自分がもっとも必要とされているところで、いかに一生懸命打ち込めるかだ。』今日の聖書の箇所、よきサマリア人のお話、私の中でいつも中村哲先生の姿とかさなります。中村先生の講演会で、「先生、なぜ危険な場所とわかっているところにまた戻っていかれるのですか」、と手をあげて質問した高校生がいました。その高校生に、先生は、穏やかに、そしてしっかりと言われました。「お金もなく、病気で道に倒れている人を見て、あなたは知らないふりをして通り過ぎるのですか」と。“Don’t discuss. Just do it.”井戸を掘り、水路を作る現場で、アフガンの人々に先生は何度も何度もこの言葉をかけていらっしゃいました。「ただ行動あるのみ」、どうか「私をお使いください」と祈る私でありますように。
海星の生徒は、神様からの呼びかけに、自らの「選び直し」をもって「はい」と応えます。隣人に寄り添い、それぞれの場において、あなたの時間とあなた自身を喜んで隣人に差し出し、自らの「行動」をもって積極的に平和をつくる人となります。
最後に、アメリカの神学者、ラインホールド・ニーバーがマサチュッセツ西部の山村の小さな教会で、1943年の夏に説教したときの祈りを紹介します。
ニーバーの祈り
神よ、変えることのできるものについて、
それを変えるだけの勇気をわれらに与えたまえ。
変えることのできないものについては、
それを受け入れるだけの冷静さを与えたまえ、
そして、変えることのできるものと、
変えることのできないものとを、
識別する知恵を与えたまえ。
今を乗り越えるための必要な勇気と冷静さ、そして知恵が私たち一人一人に与えられますようにと祈ります。2学期も、「新しい生活様式」を守りながら、力強く頑張ってまいりましょう。
今日も、よき一日となりますように。