第1学期 終業式 校長 古賀誠子
博多山笠の追い山ともに、暑い夏がやってきました。勢水を受けながら、大きな掛け声と共に、男たちが博多の街で山を曳く、狭い路地や急角度に折れるカーブなどがあり、難所が多いと言われている「櫛田入り」では所要時間を競い、一番山が「博多祝いめでた」を謳う、櫛田神社に山を納める一連の神事は、日本国指定重要無形民俗文化財になっています。
つい最近、入学式、始業式で1年が始まったばかりと思っていましたが、もうすでに折り返し地点に入りました。これまでの時間、そしてこれからの時間を無駄にしないためにも、1年のはじめてに立てた計画や目標が、確実に達成されているか、点検する時期です。不足があればこの長い夏休み期間中に、しっかり補ってください。
1年生は、はじめての高校生活、新入生研修、平和の旅、ルーツの旅、体育会、シンガポール海星との国際交流、中間考査、期末考査、授業・部活動など、日常のことから、学校行事まで、新しいことばかりで、ついていくのに一生懸命だったことでしょう。何事においても「続ける」ことこそが一番難しい、しかし、「続ける」ことによって人は大きく成長します。なすべきことにしっかり向き合い、途中で投げ出すことなく、最後まで成し遂げましょう。
2年生は、中堅学年として、特に部活動や学校行事において、よくリーダーを支えました。特に2年生は1学期、大変制服の着こなしがよかったと思います。どこであっても、いつも清潔で、センスよく制服を着ている姿は2年生でした。2学期は海星祭、シンガポール修学旅行と、高校生活最大の行事が待っています。夏休み中に必要なものは準備して、万全の態勢で2学期を迎えましょう。
3年生は、特に体育会における活躍が顕著でした。これまで築き上げてきた海星の体育会を受け継ぎ、短時間集中でよく仕上げたと考えます。また、優れたリーダーシップを発揮し、1・2年生からの信望を集め、その責務をうまく果たしたと考えます。夏休みが明けたら、進路希望最終提出、校内推薦会議を経て、推薦入試、総合型選抜入試がスタートします。どのスタイルで受験しても入試は大変です。しかし、常に意識しておかなければならないのはただ一つ、その先に社会があるということです。みなさんが行きつく先は社会です。自分を、将来社会のどこで使うのか、だれのために自分を役立たせるのか、この視点にたって進路を選択します。よく考え、進路希望調査、そして志望理由書をそろえて提出してください。進路に関する情報収集、進路選択は自己責任です。この夏休みに、しっかりと準備し、万全の態勢で受験に臨んでください。
さて、話は変わりますが、みなさんは、「ジェンダー・ギャップ指数GGI」という言葉を聞いたことがありますか。「世界経済フォーラム」が、経済、教育、健康、政治の分野毎に、データをウェイト付けして、ジェンダー・ギャップ指数を算出したものです。0が完全不平等、1が完全平等を表しています。その中で、日本はどうだろうか。146か国の中で、なんと118位でした。ちなみに、1位はアイスランド0.935ポイント、2位は、フィンランドとノルウエー0.875、4位はニュージーランドの0.835、日本は118位0.663でした。教育や健康という面では、0.9を上回り、世界でもトップクラスでしたが、経済参画0.568、政治参画0.118の分野で、大変低い数値となりました。経済参画におけるポイントは、労働参加率の男女比、同一労働における賃金の男女格差、管理的職業従事者の男女比、専門技術者の男女比を反映しています。また、政治参画のポイントは、国会議員の男女比、閣僚の男女比、過去50年間の行政府の長の在任年数を反映しています。
この話を聞いて、みなさんはどう考えるのだろう。いずれにしても、男女平等という点で、客観的に世界の中で、日本をみると、大変遅れている国であると評価されています。これからの日本は、どう変わっていくべきか。大変興味はありますが、それは実はみなさんの実力次第です。大学にいくのか、いかないのか。就職はするでしょうが、結婚するのか、しないのか。結婚したら仕事を続けるのか、続けないのか。専門技術職につくのか、一般職につくのか、総合職につくのか。管理職になることを希望するのか、しないのか。どんな人生を選ぶのかは個人の判断ではあるが、あなたが持つスキルと選びが、次の日本を組み立てていくことになるのは間違いない。つまり、意外と気づいていないかもしれませんが、高校生であるみなさんは、今まさに、その選択をしなければならない大切な時期にいるのです。そして、あなたのスキルと選択は、あなただけのものではなく、日本社会の問題にも関わってくるということを忘れないでほしい。
さて福岡海星女子学院は、なぜ女子校なのか。それは、今から60年前、女子の教育の機会が、男子と比較すると圧倒的に少なかったというのも理由の一つだったと推測される。家庭の経済的理由で、女子の教育が後回しにされていたのも否定できない。さらにもうひと昔前は、高校卒業後、女子が進学する学校は、師範学校、裁縫学校、語学学校の3つしかなかったという。今、皆さんの目の前には、様々な選択肢がある、それは大きなアドバンテージである。この選択の自由を生かすかどうかは自分次第だ。世界には、学校に行きたくてもいけない女子がたくさんいる中で、日本は、教育という点では、男女の格差はほぼなくなり、世界トップクラスにランクインしている。また、今は理系に進む女子、いわゆる「リケジョ」を増やそうと、国を挙げてキャンペーン中だ。この恵まれた社会の中で、「よく学び、社会で使える確かなスキルを身に着けようとする」姿勢が、あなた自身に問われる。「自分はよく学んでいるだろうか?自分は社会で役立つスキルを身に着けようとしているだろうか?」つまり、これは、「18歳の私」にもある「自分を高める力」が問われているのだ。是非この選択の自由を最大限活用する人になって欲しい。
時間は決して待ってはくれない。後から「今」を振り返って、あの時だったらできていたのにと後悔しないでほしい。貴重な夏休み、時間に少し余裕があるからこそ、自分を大きく変えるターニングポイントにしてほしい。