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講堂朝礼〜生徒へのメッセージ〜

Messages for Students

カラフルな国、シンガポール~「Be One」の視点から~校長 古賀誠子

 吹く風が涼しくなり、実りの秋本番にさしかかってきました。部活動の大きな大会も9月、10月を中心に行われ、県大会、九州大会へ出場をきめた部活もあり、次に駒を進めています。皆さんが熱心に部活動に取り組む姿を見て、高校生らしいチームワークの成長を感じることが出来ます。また、先日は、ベネッセの進研模試や進路マップが行われ、今年、前半6か月の授業で学んだものが、定着しているかどうかが図られました。手ごたえはどうでしたか。先生方も皆さんがしっかり点が取れるようにと、これに合わせて授業計画・準備をしてこの試験に備えてきました。先生方のスキルと、皆さんの意欲と努力があって、初めて一つの実を結びます。これが学校のチーム力です。今は、1年の中でもっともいい季節、実りを実感できる季節、豊かな実を結び、収穫が多いことを願っています。

 さて、高校2年生、最大の行事である「修学旅行」が終わりました。私はシンガポールへの引率でしたので、今日はシンガポール修学旅行について振り返りを兼ねて、お話したいと思います。シンガポールは、ご存じの通り、東南アジアに位置し、シンガポール島および60以上の小規模な島々からなる共和制国家です。シンガポールは、多くの国際ランキングで上位に格付けされています。例えば、最も「テクノロジー対応」国家、国際会議開催のトップ都市、世界で最も「スマート」な都市、「投資の可能性が最も高い」都市、「世界で最も安全な国」、「世界で最も競争力のある経済」、3番目に「腐敗の少ない国」、3番目に「大きい外国為替市場」、3番目に「大きい石油精製貿易センター」、5番目に「革新的な国」、2013年以来『エコノミスト』は、シンガポールを「世界で最も住みやすい都市」として格付けしています。また、多民族国家で中華系が74%、マレー系14%、インド系が9%、他にもユーラシア系、アラブ系、ユダヤ系もいます。海外からの移民が多く外国籍の市民が46%を占めています。平均年齢は、およそ40歳(日本は50歳)、日本と比べると若い力が強い国です。

 2022年PISA( OECD生徒の学習到達度調査 )において、シンガポールは、読解リテラシー、数学的リテラシー、科学的リテラシーの3分野において、世界1位にランク付けされました。国と家庭がそれぞれ教育に対して、潤沢な資金を投じ、その結果、幼小期から良質の教育を受けることが出来ていて、それがPISAの成績に繋がっていると言われています。さらに、OECDの担当者は、「コロナの教育への影響が見られなかった、数少ない国の一つ」としてシンガポールを評価しました。これを受けて、シンガポール教育省は「我が国の教育制度のレジリエンス(困難をしなやかに乗り越える力)の高さを示している」とコメントし、「コロナの中でも、献身的に生徒たちの教育と健康のために尽力し続けた教師たちの貢献の成果だ」とシンガポールの先生方を高く評価しています。

 さて、多民族国家であれば、民族の数だけの言語があります。実際に、シンガポールの公用語は、4つ。英語、中国語、マレー語、タミル語です。シンガポールの人々の大部分が、2言語以上を幼いころから教え込まれ、3言語以上を話す人も少なくないといいます。なぜ、そのように多くの言語を学ぶのでしょうか。それは、言語が、より多くの国々の人たちと関わるためのツールだからです。多様性は食事にもあらわれていました。洋食、中華料理のほかに、様々な種類のカレーがならぶインド料理、そしてプラナカン料理(中華料理×マレーシア料理)もいただきました。皆さんはすべての食事を美味しくいただくことはできましたか。そこにもあなたの国際性はあらわれます。

 多民族国家であれば、それだけ多くの宗教が存在します。私たちは、シンガポールの5大宗教、仏教、道教、ヒンズー教、イスラム教、キリスト教の5つの寺院を一つひとつ訪問しました。日本人には馴染みのない宗教にふれ、皆さんは何を感じましたか。イスラム教モスクでは、日本人の信者さんが説明をしてくださいました。「祈りは信者の一致の時間でもあります。同じ時間に同じ方向を向いて、目に見えない神に向かって、共に祈りを捧げることに意味があるのです。」と話しておられたのも印象的でした。たくさんの寺院を巡った2日目、ある生徒の振り返りを紹介します。「シンガポールでは、たくさんの宗教が共存しています。イスラム教のモスクがあるアラブストリート、大きな仏教のお寺があるチャイナタウン、ヒンズー教の寺院や、キリスト教の教会がある街並みもありました。日本の淡路島ほどの小さな国に、こんなにたくさんの宗教の寺院や信者たちが、争うことなく共存していることに一番感動しました。難しいことだけど、互いを認め合えるシンガポールのような国が世界中に増えて、宗教紛争がなくなればいいのにと思いました。」(2年生の振り返りより)

 淡路島ほどの小さな都市国家で、これだけ多くの文化・言語・宗教を持つ人が、仲良く暮らしている。宗教によって派閥をつくり、戦争をしている国が今、まさにこの瞬間もある一方で、スープも冷めない距離に、異なる民族、宗教、そして文化が存在する、とてもカラフルな国、シンガポール。繰り返しますが、「世界でもっとも平和な国、最も住みやすい国」として、最高の格付けがされています。成功の秘訣は何でしょうか。

 答えは「Be One」にあるのかもしれません。先週、聖フランシスコの集いで、「わが神、わがすべて」と生涯を神にささげた聖フランシスコについて学びました。さらに、「シスターの一言」のコーナーでは、「わたしにできること、わが○○、わがすべて」の中に、何を入れますか、という問いが投げかけられました。シンガポールの人々は、ひょっとしたら「わが国シンガポール」といれているのかもしれません。自分の国のために、自分は何をしなければならないのか分かっているのでしょう。

 「Be one~わたしにできること~」とは、生涯私たちが抱いていくテーマです。つまり起こってくる物事の全体をよく見て、「わたしにできること」は何なのかを見つけ、自分をそこに置くことです。(シスター入江ご講話より抜粋)「自分をそこに置く」という考え方は、修道者の生き方です。では、私たちはどうすればいいのでしょうか。こう考えます。自分が置かれた場所から逃げない、むしろその場で「自分にできること」を見つけ、立ち上がり行動する。きっとその姿は遠くから見ると、一人一人がパッチワークのピースになって、全体がカラフルで美しい図柄を生み出しているように見えることでしょう。そして、シンガポールは、それを実現している国であろうと考えます。

 まとめに、キリスト教の視点から、「Be One」をどう考えるか、分かりやすい言葉を見つけましたのでお聞きください。

「神様が私たちに期待しておられることは、ひとりひとりに対して違っています。ですからひとのまねをしないようにしましょう。私たちの手、足、目、耳、口などが、それ自体のために存在しているのではなく、互いに支え合って、体全体として機能しているように、私たちひとりひとりは、お互いのために存在しているのです。」(『そよ風のように生きる』バレンタイン・スーザ著より抜粋)

今日も、よい一日をお過ごしください。

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