「SDGsと毛糸の帽子」教頭 鶴田葉月
◆先月の探究発表会で,1年生と2年生が,環境保全,ジェンダーや貧困など,SDGsのいろいろな課題について調べ,発表するのを聞きました。皆さんが自分の問題として課題研究し,古本市などの活動を通して,自分なりにできることを実践し,一生懸命,世界をよくしようとする姿は,まさに小さなマリアです。
◆もっと時間があったら,さらに深く知りたい,調べたい,実際に現地で確認したい,これを大学で学びたい,職業にしたい…そんな考えも芽生えたでしょう。その気持ちをどうぞ大切にしてください。
◆一人一人が持っている将来の夢の最初のきっかけは,神様が導いて下さったのだと3年生の静修会で牧山神父様が教えてくださいました。私たちはテレビや小説,身近な人との出会いをきっかけに,自分で自分の興味・関心が湧いて,それが将来の夢につながったと思いがちで,だからこそ,進路希望調査用紙を提出するそのときまで,この選択が正しいのか,そして,この道に進んでうまく行くのか,不安になります。でも実は,神様が導いて下さるのだと知ってみると,何だかほっとして,自信が持てませんか。
◆先週は,シスター入江が,講堂朝礼で,マリアの宣教者フランシスコ修道会が,熊本に,児童施設・老人施設・ハンセン病のお世話をする施設をスタートさせたときのことを,お話しされました。自給自足の生活をするために,実のなる木を植えたところ,成長を続け,今年もミカンが3000個ほどなりました,とおっしゃいました。収穫して,食べたりお裾分けしたりという活動にたどり着くまでの,枝の剪定と切った枝の細断,水やり,草むしり,消毒,肥料をやる等々は実はとても重労働です。シスター方が神様への感謝のうちにミカンの木をお世話する姿は,とても尊く感じられます。
◆今月のテーマは「感謝」です。大きなことがあったときでなく,日々,近くにあるものに感謝することが大切だ,とシスターはおっしゃいました。うまく行くときもそうでないときも,感謝できる私たちでありたいものです。
◆海星の生徒は,以前,公園生活者の方に毛布や防寒着を贈るボランティア活動に参加したことがあり,そのとき,私も帽子を編んで協力しました。今年,久しぶりにお正月休みを使って編んでみました。年とともに,細い糸や編針が使いにくくなってくるのですが,ジャンボ針という太い編針と太い毛糸を使うと,2時間もあれば完成です。まん延防止で部活動が停止になった私の娘も,おしゃべりしながら一緒に編みました。シスターが,保護者対象講演会で,パッチワークをする修道院の別のシスターについて,お話ししてくださったことを思い出しました。すべての余暇を使って,5年かけてパッチワークを完成させ,それを惜しげもなく寄付したそうです。時間はその人の命だから,自分の時間を誰かのために使うことは,命を誰かに差し上げることです,と。海星で過ごす私たちは,出会う人に感謝するだけでなく,会ってもいないどこかの誰かのことを気の毒に思い,役に立ちたいと願うことができる。それは何より幸せなことです。