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講堂朝礼〜生徒へのメッセージ〜

Messages for Students

第3学期 始業式 校長 古賀誠子

                              

あたらしい1年の始まりです。みなさんと会えるのを楽しみにしていました。さて皆さんは、クリスマス、そしてお正月をどのように過ごしたのでしょうか。今年は、少し早い冬期休暇の始まりで、たっぷりと時間があったことと思います。家族や友人との時間を通して、学校とは違ったコミュニティーの中での自分の立ち位置や役割、人とのつながりを確認して、1年のスタートを切れるといいですね。その小さなコミュニティーにおける愛情や平和は、あなたの中に自信をわかせ、新しいこと、難しいことにチャレンジする勇気を与えてくれることと確信しています。

さて、年末の西日本新聞に、本校の創立60周年記念における、田尻由貴子先生による「命と愛」についてのご講演の様子が掲載されました。この記事を見て、私は3つのことを考えました。まず、第一に本校がユネスコスクール登録に向けて、「平和をつくる学校を目指します」と宣言し、今年度計画していた最大のプロジェクトの一つが世の中に発信されたことを私は大変うれしく思いました。2つ目は生徒のみなさんの感想が、たくさん掲載されていて、これから10年先、20年先の社会を担う高校生の正直な思いが、多くの人の関心を集め、「海星の生徒ってすごいね、高校生でそこまで考える力があるのはすごいよ」、などと私もたくさんの人からお褒めの言葉をいただき、あらためて海星のこと、そして生徒の皆さんのことを誇りに思いました。また、そのような学校でお仕事させてもらっているすべての教職員が、大変幸運であると感じたことと思います。「無責任な預け入れ、妊娠につながる」という根強い世論があるにも関わらず、皆さんの感想は、「ゆりかご」を別の視点でとらえる方法を世の中に投げかけました。「女性の体のことを大切にしない男性もたくさんいる。絶対に気をつけよう」「一人で抱え込むと暗い答えをだしてしまう。人の助けがあるとよい道があると感じた。」「ゆりかごにきたお母さんを責めるのではなく、『 産んでくれてありがとう』、と温かい声が社会全体から聞こえたらいいと思う。」「愛についてあらためて考えた、家に帰って、自分が生まれたときの話を、母にたくさん聞いた。」「正直、子どもを預けるのは無責任だと思っていた。さまざまな事情があって、子どもを守るためにゆりかごに来たのだ。改めて親は偉大だ」これらが掲載された皆さんの感想です。大変すばらしい気づきです。チャペルノートの積み重ねが形になりました。最後に、私が考えたのは、この記事を書いたジャーナリストの方の仕事についてです。記事の最後は、田尻先生の言葉で締めくくられていました。「子どもは神様の贈りもの。予期せぬ妊娠をした女性も前向きに生きていけます。私は喜びの出産に関わり続けたい。」もし、このような境遇で、妊娠に悩んでいるお母さんがこれを読んでいたとしたら、その方たちにどれほどの希望を与えたことでしょう。この記事は、命を救う記事、暗闇に一筋の光をともした記事、多くの人がこれを読んで救われたことと思います。取材に来て下さったジャーナリストの方の心からの思いと、物事をとらえる鋭いセンスに、感心するとともに、心から感謝しました。

私の年末をもう一つお話しします。12月27日、アクロス福岡に、「スラブ最高のオーケストラ」と呼ばれる、ウクライナ国立フィルハーモニー交響楽団が、幾多の困難を乗り越え、4年ぶりに来福しました。ドボルザーク「新世界より」、ベートーベンが遺した人間賛歌「第九」の演奏が行われました。「第九」は、およそ100名の日本人の合唱団とともに演奏され、まさに、「歓喜の歌」、2023年の締めくくりに、大きな感動を私たちに与えてくれました。ウクライナ国立フィルハーモニー交響楽団は、1995年キーウに本拠を置く国立フィルハーモニー協会の専属オーケストラとして創設されました。主に拠点キーウで年間50回以上の定期公演を行うほか、ヨーロッパ全土から招かれ活動しています。2022年2月、ウクライナへの侵攻が始まり、楽団の活動も中止。団員の中には軍に志願した人もいる状況で、戦火に苦しむ市民から「心の癒しがほしい」という声を受け、その年の9月には、定期演奏会が再開します。現在もリハーサルや公演が空襲警報で中断する日々が続く中、ウクライナの人々は連日会場を満席にするほど、この束の間の時間を楽しんでいるとのことです。「戦争はすべてを破壊する。しかし希望を失わせることはできない。」これは、楽団の指揮者ジャジューラ氏の言葉です。2つ考えました。一つ目は、「第九」の演奏の最後に、ウクライナの国旗が演奏家の手によって掲げられた瞬間のことです。聴衆が全員立ち上がり、拍手をもって、言葉にできない自分たちの思いを力強く表現しました。たくさんの人たちが涙を流していました。私の後ろには、高校生の集団も座っていて、高校生もみんな立ち上がって涙を流しながら拍手を送っていました。後から、この拍手と涙の理由は何だろうと、じっくり考えました。確かにすばらしい演奏でした、しかし、単に「演奏が素晴らしい」という意味なのか、「ロシアに負けるな」、「最後まで戦え」という意味なのか、何に対して涙を流し、拍手を送っているのだろう。皆さんはどう考えるでしょうか。

私は、胸がえぐられるほどの思い、すなわち「共感」の拍手だったと思います。ウクライナの苦悩に共感し、その苦しみを共有した時に、あまりにも自分の心が痛く、共感によって生まれた拍手だったのではないでしょうか。つまり、「わたしはあなたの苦しみとともに在る 」という意味だったように思います。略奪や強奪は決して許されるものではありません、しかし、わたしたちは、殺し合うことにも決してエールは送りません。だとしたら、この戦争はどうやったら終わらせることができるのか。堂々巡りに陥ってしまいます。目の前に苦しんでいる人がいるのに、自分の無力さを突き付けられます。為政者だけがカギを握っている戦争の終結、為政者が正しく国を導くようにと神様に求めて、心から祈りましょう。そして、このようにして「共感」によって得られる絆を強くし、人数の力を発揮していこうではありませんか。それは何よりも大きな力になると考えます。二つ目は、戦火の中、この人たちは、どのようにして集まり、破壊の続く戦地において、演奏会が持てるほどの練習をしているのか。指揮者の言葉に、答えがあったように思いました。「わたしたちは知っているのです。苦難は忍耐を、忍耐は練達を、練達は希望を生むということを。希望は決して私たちを欺くことはない。」ローマの信徒への手紙5:3-5 私たち人間は、行く手に「希望」がある限り、苦しくても前に進むことができます。それは、一人でなく、私の前を歩いて導いてくださる方がいると思うことができるからです。私の行くべき道が備えられていると信じることができるからです。今日の聖書の箇所をもう一度お読みします。「心をつくして主に信頼し、自分の分別には頼らず、常に主を覚えてあなたの道を歩け。そうすれば、主はあなたの道筋をまっすぐにしてくださる。」箴言 第3章5節~6節

1年生は、2年生に進む準備を始める時期です。部活動に勉学に精一杯取り組んでください。そして4月から海星を支える柱となります。2年生は、3年0学期の始まりです。進路獲得に向けての準備は整っていますか。自分の夢に妥協しない、そんな気概をみせてほしいと考えます。まだまだ間に合います。3年生は、いよいよ大学入学共通テスト、そして一般入試の始まりです。あなたの道筋をまっすぐに備えてくださっている方があなたの前を行かれると信じて、最後まで「なりたい自分」をあきらめないあなたでいて欲しいと考えます。

最後に、祈りの課題がたくさんあります。石川県能登地方でおきた大地震で被害に遭われた方、まだ行方の分からない人を探している家族の方々のため、JAL機、救援物資を運ぼうとしていた海上保安庁の飛行機衝突事故で亡くなられた方々、ガザ・イスラエル地区の紛争、ウクライナ・ロシアの戦争で恐怖と絶望の中にある多くの人々のために、祈り、丁寧に繋がりたいと考えます。そして、すべての人に、2024年、喜びと平和がありますように。

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