情報科はじめます
校 長 山田 耕司
PISAの結果
○ 昨年12月に2022年実施のPISA(経済協力開発機構OECDが実施する「生徒の学習到達度調査」)の結果が公表されました。その中で15歳(高校1年生)の「情報モラル」について注目しましょう。
情報モラルの設問について、「インターネット上で情報を検索するときは、様々な情報源を比較する」「インターネット上の情報をSNSで共有する前に、その情報が正しいかどうか確認する」といった設問の肯定的回答は、OECD平均よりも日本は高位でした。
○ 一方、「自分で集めたデーターを分析する」「データーを集めて記録する」の設問には、前者は70%、後者は60%の生徒が「まったく、またはほとんどない」と回答しました。「ICTを使って行う学校の課題のために文章を書いたり編集したりする」場合でも50%の生徒は「NO」と回答しました。生徒はコピペに近い学習で満足しているようです。これが高校1年生の実態です。知識はあっても実用しなければ情報の海に沈んでしまいます。これでは文部科学省が悉皆で期待する「主体的・対話的で深い学びの実現」には到達できません。
情報の海
○ 本校で使用しています5年生社会科教科書の内容の一つ「情報産業」は新聞を中心に学習をします。情報媒体には新聞の他にテレビ・ラジオ・インターネットがありますが、流行の波に翻弄されずメディアの中で最も信頼度の高い「新聞」を取り上げます。
○その学習で 時代を反映して特に学ばせたいのは、「情報の伝え方とその影響」、そして「情報社会の問題」です。
新聞社ごとに記事の大きさや内容が異なります。同じ記事でも扱う大きさに違いがあります。同じ出来事でも新聞社によって書いている内容が違います。伝え方が違うと、読者の感じ方や判断も変わってしまいます。マスメディアが不確かな情報や誤った情報を伝えてしまうことで、社会に大きな影響を及ぼしたり、報道被害を与えたりします。
○「能登半島地震」ではSNSを通して救助を求める偽情報が流れ、消防や警察署が出動する事態も起きました。AIで生成されるフェイク画像や映像は、即座に真偽を判別できないほど精密です。特に災害時は「伝えなければ」といった心理から怪しい情報でも拡散しやすい上、流言が憎悪感情を助長する恐れがあり、深刻です。毎年9月1日になると話題になります「関東大震災」の事例がそれを報告しています。
今こそ情報教育を
○ PISAの調査では、紙の本を読むことだけが読書ではなくなっています。PISAでは、読書はすでに「本、雑誌、新聞、ウェブサイト、ブログ、メールなどの多様な読み物を含みます」と定義しています。多くの大学生は、政治経済や国際問題のニュースはネットでしか情報を得ないと捉えています。
○ 「 フェイクニュースが戦争の行方さえ左右しかねない時代になった」といわれます。ニュースとは何で、その本質はどのようなもので、日々のニュースをどう読み解いていけばよいかの教育が欠かせません(NIE教育といいます)。
情報科はじめます
○ テレビのない世帯も珍しくありません。マスメディアから遠ざかりネットで読んだり見たりするニュースはだれも価値づけてくれません。読む側に任されます。信頼性について疑問が生じます。だからこそ学年の発達段階に応じたメディアリテラシー・ニュース教育・NIE教育が必要と思います。
○ 充実した理科室やガイアの森がある理科教育に特色をもつ海星小学校です。子どもたちも「科学のひろば」や理科の時間が大好きです。これは本校の「年間授業時数」が他の学校より120数時間多い、専門家による専科制学習というメリットを生かしていることによります。
○ 新年度よりさらに楽しい学校生活が始まります。
「情報科」を新設します。
情報科チームによる専門的な教育です。そのために「小学校情報教育」で研究実践実績のある先生を招きます。関連教育機器の充実も図ります。どうぞご期待ください。