聖書が育む心
校長 深井 隆弘
世界の三大ベストセラーは、「聖書」、マルクスの「資本論」、サン=テグジュペリの「星の王子さま」と言われています。この中で世界で一番読まれている本が、聖書です。
聖書は、キリスト教の聖典であるとともに、人が生きていくうえで何が大切なのかという根源的な問いへのメッ セージが随所に示されています。2千年近くもの間、世界の人々に読み継がれてきた理由がそこにあります。
聖書には、旧約聖書と新約聖書があります。旧約とは「旧い契約」という意味で、イスラエルの民の歴史が書かれています。それに対して新約とは「新しい契約」という意味で、「約束の救い主が到来した」という報せが書かれています。イエス・キリストのことです。本校は、カトリックの学校として、子どもたちに心の教育を行うため、この聖書を基盤にした教育活動を学校行事や教科などを通して行っています。その様子を一部紹介します。
○全校のつどい
毎週月曜日の朝の時間は、フランシスコホールに全校児童が集います。讃美歌が流れ、静かな雰囲気のなか「全校のつどい」が始まります。宗教委員会の児童が聖書の一節を朗読します。朗読する一節は、担当の教師が子どもたちの様子や
時期を見ながら選んだものです。朗読後、校長がその一節についての話をします。この後、子どもたちは教室に帰って、聖書の一節と校長の話をもとに、大切だと思ったこと、行動したいと思ったことを「みことば作文」に綴ります。
【なくした銀貨】
新約聖書には、イエスのたとえ話がよく出てきます。この「なくした銀貨」は、十枚の銀貨の内一枚をなくした女性が家中を探し回り、やっと見つけ出して、友だちなどを集めてとても喜んだ、という短い話です。ここでは女性が神さまを、銀貨がわたしたちを表しています。
つまり、神さまは一人も残さず、私たちを愛してくださっている、ということをたとえています。
子どもたちはこのたとえ話に、自分たちを大切に思ってくださっている家族にも思いを馳せています。
・ぼくたちがお母さんやお父さんにかなしい思いやいやなことをすると、かみさまがかなしまれる。けど、くいあらためる、または回心することによって、お母さん、お父さん、かみさまがよろこばれるのかなと思いました。(3年生) |
【新しい生活の決まり】
新約聖書の使徒パウロが書いた「エフェソの人々への手紙」の一節に、二つの言葉が対比されて出てきます。「悪い言葉」と「聞く人々に恵みをもたらし、人を高めるのに役立つ言葉」です。
この二つの言葉の後「すべての苦々しい思い、憤り、怒り、とげとげしい声、ののしりを、すべての悪意とともに除き去りなさい。そして、互いに親切にし、慈しみの心をもって、心から赦し合う者となりなさい。」と続きます。
子どもたちは、この一節を聞いて、自分自身の日頃の言動をふり返り、考えています。
・私はいやな言葉をけんかをした時に言ってしまうので、まず相手の気持ちになって話し合いをしたいです。 ・神さまも喜ぶ言葉を使うためには、まず自分から積極的に相手によい言葉を使うこと、けんかをしたら素直に謝ることを守っていきたいと思います。(5年生) |
○宗教の時間
宗教の時間は、各学年週1時間行います。低学年が主に教師作成の資料、中学年が子ども用の新約聖書と旧約聖書、高学年が大人用の新約聖書を使用しています。また、道徳の教材も計画的に使用します。
6年生は、画家デューラーが残した有名な絵画「祈りの手」の逸話をもとに、「祈りとは、どのようなものか。」という問いに対する自分の考えを持ち、聴き合いました。
・感謝の気持ちを相手に伝えるもの。 ・自分を救ってくれる、苦しい思いを神さまに伝えるもの。 ・自分を正しい道に案内してくれる、包み込んでくれる、安心できるもの。(6年生) |