なめらかな育ち
今、幼小連携教育が
校長 山田 耕司
保幼小の架け橋
〇 情報化社会が進みます。且つ少子化の時代です。子育て にも子育ちにも課題が山積していると言われます。
そんな中、文部科学省が幼稚園・保育園・こども園と小学校 の教育を接続連携させることを施策として進めています。
文科省がスタートカリキュラムを提案し、全国で高松市などがモデル地区として事業を展開しています。
〇 幼稚園・保育園・こども園の3つの幼児教育機関職員が 一緒に研修したり、公立と私立の垣根を超えて研修したりしています。
一緒に研修したり、公立と私立の垣根を超えて研修したりしています。
小学校にはタブレットが配置されています。今後は就学前施設にも順次設置が進みます。タブレットを活用して子どもの遊びや学びを映像でとらえて、それを見ながら幼児期の遊びや学びを小学校での学びや遊びにいかにつなげていくか、どういったカリキュラムを開発すると子どもの学びが充実するかを研修・研究します。
〇 幼児期は遊びを通した学びが中心です。遊び(自由で創造的・想像的)の中ですごく充実していた子どもたちが、小学校に入学すると教科の授業を受けることになります。
4月に入学して、いきなり「膝に手を置いて授業を聞きましょう」となると、子どもたちにとってはとても高いハードルになります。
一般的に小学校の先生は、そもそも就学前施設での学びの実際を十分に知らないのです。小学校の物差しで子どもを見てしまいます。本や文字ではなく子どもの姿を映像でとらえて、この子どもはこの活動を通して何をしたいのか、どこが成長した部分かなどを、小学校の先生が勉強していきます。
もちろんですが、幼稚園等の先生も小学校低学年を参観観察して子どもの姿に学んでいきます。その両者が気軽に話し合えたり、伝えあったり、聴き合ったりして、コミュニケーションが図れる関係になりますと、子どもの学びも充実していくし、接続もうまくいくと思います。
赤坂での実践
〇 2003年~2006年、私は福岡市中央区の赤坂で小学校校長と幼稚園園長を兼務していました。福岡城址の中に小学校と幼稚園が隣接して建っていました。
私は、1998年~2001年、英国ロンドンで日本人学校(小中一貫校・児童生徒約800人)の校長をしていました。この時英国の学校教育に学んだ経験を活かして、赤坂で幼小連携教育を研究し成果を発表しました。九州では初めての試みでした。
〇 「造形」を核にしたカリキュラムを作り、幼稚園の「造形遊び」が小学校低学年の「図工」へと発展する学びをつくる構想です。学習時間を確保するために小学校では「図工」と「生活」の合科を工夫しました。
海星での実践
〇 海星マリア幼稚園は、ホンモノのモンテッソーリ教育(1975年導入)を行っている数少ない就学前施設の一つです。2014年園舎新改築に伴い、施設を高校側から小学校側に移転しました。それは幼小連携教育を進めるためです。
2017年~2019年、私は園長を兼務し、この教育の促進に努めました。現在は小学校副校長から転任した野口園長と協力しながらさらに促進しております。
〇 マリア幼稚園には、小学校専科教員による「かがく教室」、「かいが教室」、「えいごの時間」、「こころ(宗教)の時間」があります。また、児童と幼児が定期的に交流する「わくわくこどもランド」や「絵本の読み聞かせ」があります。
海星マリア幼稚園のモンテッソーリ教育の内容は「お仕事」と呼ばれる「遊び」だけではありません。イエス様やマリア様に倣う「こころの時間」や、科学の眼を培う「かがく教室」、感性を醸成する「かいが教室」、多様性を体験する「えいごの時間」、「児童と幼児の交流」があります。
なめらかな育ち
〇 大人の期待があります。一人ひとりの子どもの歩みがあります。日本の社会で成長していきます。情報化社会の中で国境や文化の壁を、人や子どもは超えていきます。そして多様な人々と多様な文化と交わっていきます。0歳から12歳までの人間性豊かな時期に味わう、なめらかな育ちこそが、これから続く100年人生の基礎となります。