みんなでSDGsの学習 校長 山田 耕司
中秋の名月も過ぎ秋たけなわです。秋の夜長、食欲の秋、読書の秋、スポーツの秋、みのりの秋。秋は1年中で最も自然を感じる季節かもしれません。学びの秋に、海星小学校ではみんなでたのしくSDGsの学習に取り組んでおります。
2年生では
〇 音楽の時間です。「みのまわりの音をこえであらわして、音楽をつくりましょう」。子どもたちの日常は色々な音に囲まれています。家の中の音、乗り物の音、動物の鳴き声、自然の音、人の話し声、たくさんありますね。よく耳を澄ますと、音には「たかさ・ひくさ」「強さ・よわさ」「ながい・みじかい」「くりかえし」「かさなり」「ねいろ」そしてそれらを合わせた「かんじ」がありますね。子どもたちは観察をし傾聴し受容し共感して音が音楽になっていることに気づいていきます。そして面白がって自分でつくってみたくなります。森のある小学校海星では、その音を「自然」の中に求めました。
○ 70億人が植物や動物と共に暮らす地球は、大きな課題を抱えております。最近の異常気象は、NHK連続テレビ小説「おかえりモネ」のテーマにも取り上げられるほどです。
世界中の人々は、共にこの地球で生き残るために国連の示す「持続可能な開発目標」17をかざして努力を続けます。
2年生の子どもたちが音楽の時間に「自然」をテーマに音から音楽をつくり楽しんだ後に、人間の開発によって脅かされる「自然」に注目し、参加して今ある「自然」を維持していくために、学級活動や生活科で教科横断的に学びを繰り返していきます。「学んで自ら動く」。これがSDGsの学習です。
IB教育を進める学校
〇 欧米で精力的に進められているIB教育(国際バカロレア教育)は「探究的で国際的視野をもつ人間」の育成をめざします。グローカルな人の育成です。グローカル=ローカル+グローバルの造語です。自分の住む地域での営みの中から課題を発見し解決する体験を活かして、さらに国際的視野で考え行動する人間の育成です。
日本では、中高一貫私立校や有力国公立中学・高校で外国語教育とタイアップして進められています。
○ IB教育は3歳~19歳を対象に行われます。その初等教育では、6つの教科横断的なテーマがあります。その一つに「共に生きる地球環境」があります。2年生の実践は「音楽を楽しみながら森林を守る」ですから、SDGsの学習とIB教育の目標にかなうものです。
ゆとり教育=教科横断的な学習の時間
〇 戦後の経済復興社会を反映した知識偏重教育の弊害が校内暴力やいじめ事件として頻繁に報告されるようになった1980年代から「ゆとり教育」は徐々に始まりました。1992年に低学年の「生活科」の登場、さらに2002年中高学年の「総合的な学習の時間」の登場で本格的になりました。
私は、1976年~2001年に教育系大学の附属学校や日本人学校での教育研究に関わっておりましたのでこの教育の大きな転換は、日本の学校教育の国際化へ期待されるものでした。
〇 「総合的な学習」は教科書があえてありませんでした。
主な4つのテーマ「国際理解」「環境問題」「福祉」「情報」が提示されました。日本は、欧米の教育、特にイギリスの教育に学ぶ姿勢が伝統的に顕著でありました。教育系大学附属学校や一部の研究熱心な公立校・私立校では、この機会をとらえ特色ある教育や探究的な学習を展開し成果を上げることができました。一方、多くの学校では、「教科書がない」「指導者がいない」等の理由で、ゆとり教育は浸透しませんでした。
この教育の目的は、ユネスコスクールやSDGs教育、IB 教育に共通するものです。当時の教育界が混迷したのも無理なかったと言えます。
6つの能力
〇 ロンドン日本人学校(1998年~2001年)で、教科等横断的な学習「ロンドンタイム」を創設し、小中学校と特別支援学級の子どもたち全員を対象にこの研究を行いました。目的は「海外で生活する小中学生にどんな能力が必要か」の解明です。この能力はIB教育「国際的視野を持つ人」の育成につながります。①知識獲得力②適切な判断・評価基準をつくる力③論理的な判断力④「公正さ」を求める思考力⑤人との関係をつくる力⑥課題を参加して解決する力 の6つが必要となります。その基礎的力を醸成するために、海星小学校では「宗教教育」「自己表現・評価」「森のある小学校」「特色ある学校行事」「英語教育・国際交流・姉妹校交流」「専科制教育」「聴き合い活動」「ICT教育」「海星100冊」を大切にします。