校長室からMessage

体験とウェルビーイング

校 長 山田 耕司

聴くことと行うこと

○ ルカ福音書に家と土台の関係をたとえにしたお話があります。「聴くことと行うこと」の大切さを説きます。

わたしを『主よ、主よ』と呼びながら、なぜわたしの言うことを行わないのか。わたしのもとに来て、わたしの言葉を聴き、それを行う人が皆、どんな人に似ているかを示そう。 それは、地面を深く掘り下げ、岩の上に土台を置いて家を建てた人に似ている。洪水になって川の水がその家に押し寄せたが、しっかり建ててあったので、揺り動かすことができなかった。 しかし、聴いても行わない者は、土台なしで地面に家を建てた人に似ている。川の水が押し寄せると、家はたちまち倒れ、その壊れ方がひどかった。

○ 私たちは、感動する話を聴いたり本を読んだり情報に触れたりして、一時的に心を動かせます。その次に行動に移すことが色々な理由でなかなか行えません。勇気や踏ん切りがたりないのです。でもイエスはおっしゃいます。「やってごらんなさい。」「大丈夫。私がそばにいますから。」

 分かっています、でもからだが動きません

○ 夏休みに田舎のおじいさんにプールに連れて行ってもらいました。田んぼの中のプールです。町の子たちがわいわいはしゃいでいます。赤とんぼがすいすい泳いでいます。Sちゃんは4年生ですがまだ浮き輪をはずせません。怖いのです。幼稚園くらいの子がお兄さんの手を取ってばしゃばしゃ泳いでいました。「私も泳げたらどんなに楽しいだろうなあ」。「おじいちゃま~。私もおよげるかな~?」。おそるおそる手を出しました。握ろうとするとひっこめました。

○ 次の日も次の日もおじいさんとプールにやってきました。そして、浮き輪を外しました。1週間経ちました。長い間お留守番をしていてくれたお父さんにスマホの映像を見せました。5メートルくらい進んでいます。頭をぐりぐりなでてもらいました。

体験を積み重ねる

○ 人の成長の過程で、最も注目したいのは、0歳~12歳の時期です。人間の人格・人間性の根幹が形成されるこの時期に脳に、「身体的な刺激」「知的な刺激」「霊的な刺激」この3つの刺激を与えること(豊かな体験の場と人を提供する)が、子どもの豊かな成長に欠かせません。

○「ウェルビーイング」。近年よく耳にする言葉です。
WHOが健康の定義に使ったのが1946年です。「良好な状態」と和訳されます。子どもたちが幸福で充実した人生を送るために必要な「健康」「幸せ・幸福」「福祉」に関わる機能と能力のことですね。

○慶応大の「幸せ」研究調査によると、幸せな人は視野が広い、幸せな人は創造性が高い、幸せな人は友だちが多い、幸せな人は健康長寿などです。そこで、調査の結果を分析して「幸せの4つの因子」を求めました。

①「やってみよう!因子」自己実現と成長の因子です。②「ありがとう!因子」つながりと感謝の因子です。③「なんとかなる!因子」前向き楽観の因子です。④「ありのままに!因子」人と自分を比べ過ぎないことに関連する因子です。これらを満たしている人は幸福度が高く、どれかを満たさないと幸福度が低くなることが分かっています。

○ 喜びや悲しみ、怒りや苦しみなど、一つ一つを体験し積み重ねることで「ウェルビーイング」は自分のものになっていきます。「自ら行うこと」が幸せの基礎基本です。

未来っ子に培いたい能力

○ 私は勤務した3つの日本人学校(バンコク・パナマ・ロンドン)計9年間での研究や現地校との交流から、海外で暮らす日本人の子どもには「6つの能力」が必要と分析しました。これらの能力は内外の国際社会に生きるすべての子どもにも求めたいと願います。自ら「行うこと」の基礎基本を、海星っ子は6年間、教育環境の整備された小学校で学校生活・学校行事・授業(聴き合い活動・ポートフォリオ評価)を体験し、積み重ねます。

①既知の知識の習得

②適切な判断・評価基準をつくる力 

③論理的な判断ができる力 

④「公正さ」を求める思考力 

⑤在留国の人々との関係をつくる力 

⑥課題を、「参加」して解決する力

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