多文化共生の視点
校長 山田 耕司
パウロの手紙
○ 聖書にはパウロの十三の手紙が福音書と共に収められています。その手紙は、パウロが創立した小アジア半島やギリシャ地方の諸教会、訪ねようと思うローマのキリスト教徒、あるいは彼の協力者にあてられたものです。 言語や文化や歴史、民族の異なるそれぞれの教会への手紙は、当時の信者の問題、不安に対してのパウロの応え、キリスト的な一致について書かれています。パウロは弟子のルカを連れて三回にわたる伝道旅行をしています。
○ パレスチナ(ユダヤ)の一宗教であったキリスト教を多く の人のための宗教へと方向づけ、その道を切り開いた最初の人がパウロです。彼の手紙を読むと、「キリストによる喜びと平和」「神への感謝」「神への賛美」の教えが諸教会へ伝わったことがわかります。
これらの手紙を通してパウロは、自分が創立した教会や、共に働いてきた仲間達を励まし、支え、導いてきました。そして同時に、現代の人々にも同じ慰めと励まし、支えを与え続けます。パウロは「多文化共生」を、キリストの教えを通して身をもって進めた初期の人です。
新しい大学教育
○ 従来の国際交流やグローバル教育から、より一層世界を視野に入れた教育が始まっています。「異文化間力」を育み「領域横断的思考」を身につける学びです。脱教室型・脱キャンパス型の学びによって「多文化共生」の視点をもつ人材を育成するねらいがあります。一例は日本女子大学の国際文化学部です。現代はグローバル化が進む一方、ウクライナ侵略のように異文化間で問題も生じている不確かな時代です。このような時代では文化を理解せずに社会の動きを理解することは難しいと思います。文化という観点から国内外の社会課題について考え、解決する力を醸成することは重要です。
○ 国際的な視野で地域文化や芸術文化を包括的に学び、多様な文化や言語をいろいろな場で実体験で学んだうえで、「自己の既成概念」(自分には当たり前のこと)を打ち破り、共感的に解決する「異文化間力」を身につけていくことがこれからの人には求められます。
○ 海外留学をしても、そのキャンパスに留まっているのではなく、美術館・博物館・世界遺産等の芸術・民俗学習プログラムに参加することが必須です。学んだことは発信し反応や評価を期待するのです。国際Communicationの重要性です。「日本を知らない日本人が多い」と海外からの留学生に言われることがあります。NHKの番組「Cool Japan」にその例を見ます。日本各地での実体験も必要です。
我が家のLine交流
○ ロンドンに暮らす孫K(中1)と福岡の孫N(中3)がLineで話しています。新年の恒例の風景です。私は遠くで水彩画を描きながら聞いています。
N「Kちゃん、イギリスには通信表みたいのはあるの?数学がAとかBとか点数がついたの」
K「そんなのないよ。全部文章で書いてあるの。私のいいことばかりだよ」
N「ええ?全部?英語も数学も音楽も、全部文章なの?」
K「そうだよ。日本は?」
N「Kちゃんの学校は、私立?公立?」
K「今は公立だって。カトリック校のWaiting中なの。順番がなかなか来ないの」
N「友だちできた?」
K「みんな友だちだよ。どうして?いろんな子がいるよ。 私は日本人の血がちょっと入っているけどね」
N「ええ?Kちゃんお父さんもお母さんも日本人でしょう」
K「私はイギリスで生まれたから」
N「そうか。Identityはイギリスなのね」
N「日本に帰ってくる?大学はどうするの?」
K「まだわかんない。アメリカかな日本かな」
N「え、イギリスじゃないの?」
K「いろんなところに行ってみたいから。Nちゃんは?」
N「私は理系!」
K「ロンドンにおいでよ」
N「今はちょっと無理かな。大学に入ったら行けるね。Kちゃん今年は日本に帰ってこれるの?おばあちゃまたち待ってるよ。私たちも」
まだまだ続きます。女の子の話は長いのです。私の絵は完成してしまいました。