校長室からMessage

聴き合う,深め合う,分かち合う

校 長 山田 耕司

目は体の灯

○ 2学期の始業式で、次のルカ福音書が読まれました。

灯をともして、穴蔵の中やますの下に置く者はいない。入ってくる人たちに、光が見えるように燭台の上に置く。あなたの目は体の灯である。目が澄んでいるときには、からだ全体が明るいが、目が悪いときには、体も暗い。だから、あなたのうちにある光が闇とならないように注意しなさい。もし、あなたのからだ全体が明るく、暗い部分が少しでもなければ、ちょうど、灯がその輝きで、あなたを照らすときのように、あなたのからだ全体が明るいのである。(ルカ11章)

「体の灯は目であります」。灯は照らす働きをします。暗いと何も見えませんが、灯があれば、周囲は照らされて見えるようになります。体は目を通して外の世界の情報を得ることができます。目が見えなければ自分がどこにいるのかさえ分かりませんし、どちらに行けばいいのかも分かりません。人の助けがなければ途方に暮れてしまいます。目が澄んでいればものをきちんと見ることができます。見るべきものを見ることができます。

○ 一人ひとりの目は大きさも形も色も違いますね。何を見たいか何を見るか、人それぞれです。でも400の目が集まって、 一人ひとりの澄んだ目が集まって、聴き合ったり分かち合ったり協力し合ったりすれば、学校を明るくします。クラスを明るくします、みんなで澄んだ目をもちあって楽しく元気な2学期にしましょう。

  AIの陥穽

○ 小学校教育に対するAIの影響が話題になっています。夏休みを前に、「AIと読書感想文」についてマスコミが何度も取り上げました。一般的に「AIは正しい答えを自動的にだす機械」とされていますが、正確さよりも、利用者が容易にアクセスできることを優先させています。利用者の質問に対して、言葉の意味を深く理解せずに確率計算を行い、もっともらしい易しい文章で答えることで、商業的な成功を期待します。利用者が使用するパソコンにはその人の興味関心の傾向に即した情報が自動的に大量に送られるようになります因って生成AIを使って読書感想文を書くことは可能です。しかし…?

読書感想文を書かせるねらい

○ 1冊の本を図書館か書店で選ぶことから、この学習はスタートします。大量の本の山から自ら選択するのです。勿論「おすすめコーナー」もあります。1冊の本を通読・精読し、必要に応じで熟読と進めていきます。熟読の時は、心に残ったことや思ったことをメモします。気になった言葉や文章を書き写しておきます。

○ 次に、感想文を書く構想を立てます。①私はなぜこの本を読むのか、紹介したいのか。②この本を読んで一番心に残った場面はどこか。それはタイトルと関係あるのか?③その場面で特に心に残った人物の行動や言葉は?④心に残った登場人物をあげると。⑤その人物と私を比べてみると。似ている点や異なる点は。⇒その人の特徴が分かる。すごい・びっくり・変だよ・ユニーク。⑥この作者がこの作品で伝えたいこと大切にしていることは。⑦私は作者の考えに賛成だ、反対だ、疑問がある。⑧私がそう思う理由は。

○ そして、感想文として表現するために、文の組み立て「はじめに」「中心は」「おわりに」に書くことを決めていきます。「中心は」発見したこと・学んだこと・不思議に思ったこと・疑問に思ったこと等自分の気持ちや考えを中心に描きます。最後に感想文の題を決めます。本の書名ではなく自分の書きたいことから決定します。

○ 情報を収集して自分の考えをつくる学びの基礎の醸成が読書感想文のねらいです。自ら汗を流し何度も体験しなければ自分の考えをつくり深めていくことはできません。本を読まなければ(通読・精読・熟読)、何も始まりません。

聴き合う・深め合う

○ 読書感想文は子どもの表現物です。国語や社会科で聴き合い活動をする場合は、自分の考えを1枚のシート(表現物)にまとめます。そのシートを使って自分の考えを友達に伝えます。また、友達の考えをシートの内容を示されながら、より具体的に聴くことができます。互いに深め合います。

○ AIに頼って書いた読書感想文は結果であって思考のプロセスが抜けています。また他者の存在を大切にしながら聴き合わなければ思考が深まらず分かち合い(受容・共感的理解)は難しくなります。分かち合わなければ、個として集団のメンバーとして、人としての豊かな成長は充分に望めません。

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