校長室からMessage

親ガチャ!?

        教頭 松本 裕子

〇「お母さん、100円ちょうだい!ガチャガチャしたいから」今も昔も中身は変わったものの何 が出てくるか分からないスリルを楽しむ遊びは変わりません。中身を選べないことをもじって「親ガチャ」という言葉があります。つまり、子どもは親を選べないという意味です。

〇 親の子どもへの虐待ニュースが後を絶ちません。虐待にも身体的虐待と心理的虐待、性的虐待、ネグレクトがあります。福岡県の令和2年度「児童虐待相談対応件数状況」が公表され、小学生の虐待種類別対応件数を見てみますと、身体的虐待が25,7% 心理的虐待57,4% 性的虐待1,1% ネグレクト15,8%でした。加えて、ヤングケアラーの増加も報告され、遊びや学校生活を犠牲にして兄弟姉妹の面倒をみたり、食事の世話をしたり、病弱の父母の世話をしたりする小学生がいるのです。本人は、それが当然の環境と受け止めていますので、負担を認識して相談する子は、12,1%に過ぎません。

〇 町田そのこさん著の「52ヘルツのクジラたち」を校長先生からお借りして読みました。母親から虐待を受けた女性の物語です。父親が病気で倒れ、家計を支えるために母親が働く。父親の世話を娘(主人公)がします。自分の時間をすべて父親の世話に費やし、母親からは癒しの言葉もなく虐待を受けます。その主人公を一人の級友が助け出してくれます。この生活が当たり前ではないことに気づきます。新しい世界での生活が始まります。クジラにしか聞こえない「52ヘルツ」の声。自分の思いを言いたくても口に出すことができない声を私たち大人や親は聴こえているでしょうか。聴こうとしているでしょうか。

〇 私たちは、家庭環境の違う子どもたちを「海星」と言う神様の教えを指針とした学校で集団生活をしています。子どもたちの育ちは十人十色です。まずは、子ども理解から始まります。理解するにはたくさんの情報が必要です。専科の先生の目で、カウンセラーの目で、養護教諭の目で、担任の目であらゆる角度で情報共有いたします。もちろん、保護者の方からの情報もいただき、保護者の目も共有いたします。ひとりの子どもを育てるのには責任が伴います。だから不安にもなります。しかし、正解はありません。ただ、我が子をお腹で宿したときから子育てが始まっているのですから、一番我が子の事を理解できるのは母親だと思うのです。そして、子どもを宿すことを計画したのは神様です。

『あなたの書にそのすべての部分が書き記されていました。それが形造られた日々についても』
詩編139.16に胎児のあなたを見ていますよと。

〇 子どもは親を選ぶことができませんが、神様は親を選んで「あなたが母親になるのです」とおっしゃっているのですから、自信を持って子育てをしていただきたいのです。それでも不安になったのでしたら、神様に想いを聴いていただきましょう。きっと、心が平安になります。

〇 子どもは親をよく観察しています。親に認めてもらいたい。褒めてもらいたい。心配かけたくない。などの52ヘルツの声で発しているかもしれません。親子は一体というものの、別の人間です。親自身の人生の幸福感が必ずしも子どもの幸福感と同じとは限りません。親自身が自分の価値と自尊心を、子ども以外に持つ必要があります。また、子どもが親に悩みを相談した場合は、聴くことに神経を集めましょう。聴いた後も忠告を与えたり、提案したりは必要ではありません。子どもはただただ、同じ時間を共有できた幸せ感(喜び)で満たせれているからです。

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