校長室からMessage

読む力や態度が育つ

校長 山田 耕司

Society5.0

○ 急速度で新しい時代が到来しています。「Society5.0(読み方:ソサエティ5.0)」と言うそうです。
簡単にいうと現実空間(フィジカル空間)と仮想空間(サイバー空間)が一体となり、さまざまな社会問題の解決と経済発展を実現する人間中心の社会のことです。現実空間の情報がセンサーやIoT機器を通じて仮想空間に集積され、このビッグデータをAIが解析。現実空間に還元していく仕組みになります。

○ 人間は人として発展成長するために、群れから社会をつくりました。
はじめは狩猟社会(Society1.0)、続いて農耕社会(Society2.0)、そして近代になり18世紀に工業社会(Society3.0)、情報社会(Society4.0)の現在に続く、未来社会が「Society5.0」です。

学びが変わる

○ 文科省は新しい時代の「共通して求められる力」として「文章や情報を正確に読み解き、対話する力」を挙げています。社会が変われば当然学びも変わります。

○ 従来大切にされてきた「知識・技能としての語彙や数的感覚などの基礎学力」に加えて、AIに対して人間の強みを発揮するための基盤として、論理的思考を行うための読解力や他者と協働して思考・判断・表現を深める対話力等の社会的スキルなど、読み書き対話する力が決定的に重要ですとしています。

○ どうでしょう、ここに私たち海星が15年前から精力的に進めています「2年生100冊」(本に親しむ)、「海星100冊」(読む力)と「聴き合い活動」(誰とでも対話できる態度)の実践との関わりを見つめたいと思います。

○ これからの小学生の読む能力は、「複数のウェブページを閲覧し、条件に応じて情報を取り出し判断する力」が期待されます。全ての頁が文字と画像(図表や写真、イラスト、箇条書き)、音楽・動画などで表現されています。見つけ出すことはできても、それらを関連づけて自分の考えを構築することは大きな課題です。

○ 現在海星では、これらの学習経験を各教科で体験するICT教育を学校全体の研究テーマとし取り組んでおります。特に理科と生活科・総合的学習「ステラマリス」の関連による豊かな体験を意図しております。それを支えるのが国語科の学習や図書館教育です。

読む力や態度                    

○ 国語科の学習で、「情報の収集」や「内容の検討」について子どもたちは系統的に学びを積み重ねます。そのことは、「話すこと・聞くこと」「書くこと」の領域における「精査する・解釈する」「考えを形成する」の事項にも深くかかわっております。基本は言語活動です。

○ 読む力や態度は読書活動によって 養われます。文学・ノンフィクション・科学読み物・評論文・図鑑によくみられる解説文、新聞(小学生新聞やこども特集)や雑誌などに日頃から親しむ読書生活を育む視点が大切です。海星では教科書の単元に応じて発展読書、先行読書、並行読書などをすすめています。

受験勉強の陥穽                       

○ 受験勉強で共通して強調されるのは、効率化や費用(時間)対効果です。当面の目的を達成するための短いスパンで知識量優先、技能優先の勉強法が進められます。そのエンジンは競争の原理です。これらは読書とは質を異にします。

○ 文科省は「社会が変わる~学びが変わる」中で新しい時代「Society5.0」の人材の育成を高等教育機関(大学・大学院)に求めています。それに伴い高校の教育内容も大きく変化しました。それらの新しい流れに対応できる基礎的能力が「読む能力と読む態度」です。読書による読む量の担保が必須です。小学校の低学年から計画的に読書習慣を身につけることは大変有意義なことになります。それを妨げる要素が身近に存在する場合は、少しずつ排除するのが賢明です。そのためにも「海星100冊」や「2年生100冊」を糸口に読書習慣が発展することを期待します。

一覧